バッテリーバリューチェーン
再生可能エネルギーと電気自動車(EV)への世界的な移行により、バッテリーの需要は急速に拡大しています。国際エネルギー機関(IEA)によると、バッテリーは、2030年までに世界の再生可能エネルギー発電容量を3倍にするという、約200か国による国際的な合意を実現するための重要な要素とされています。さらに、EV用バッテリーの需要は2030年までに約7倍に増加すると予測されています。
バッテリーバリューチェーンは、リチウムやコバルトといった原料をバッテリーグレードの素材へ精製することから始まります。その後、バッテリーセルの核となる正極活物質(CAM:Cathode Active Material)が製造され、セルとして組み立てられた後、EVやエネルギー貯蔵システム向けのバッテリーパックに組み込まれます。
使用後のバッテリーは回収され、有価物を再利用可能な形でリサイクルすることで、重要資源の持続的な供給が確保されます。こうしたバリューチェーンの各段階における継続的な技術革新こそが、プロセス効率の向上と環境負荷の低減を両立させる鍵となります。
バッテリーバリューチェーン全体で循環型社会を加速
アルファ・ラバルの熱交換および分離技術は、バッテリーバリューチェーン全体で活用することができます。これらの技術は、精製・製造・リサイクルといった各プロセスにおける循環性(サーキュラリティ)の加速に貢献します。
デカンタ遠心分離機、ディスクスタック分離機、蒸発システム、プレート式熱交換器といった幅広い製品群は、真のプロセス改善を支える価値あるツールボックスとして機能します。
以下では、アルファ・ラバルの先進的なソリューションが活躍する、バッテリーバリューチェーン内の各セグメントを紹介します。これらの技術は、より持続可能で効率的なプロセスの実現を支援します。
金属精錬
リチウムイオンバッテリーの急速な需要拡大により、リチウムをはじめとする重要原材料のサプライチェーンには大きな負荷がかかっています。こうした需要に持続可能かつ効率的に対応するためには、従来の手法に代わる精製プロセスの最適化が不可欠です。 近年では、直接リチウム抽出(DLE:Direct Lithium Extraction)といった革新的な技術が導入されており、リチウムの回収率向上、環境負荷の低減、そして高純度の水酸化リチウムおよび炭酸リチウムの安定供給を実現しています。 さらに、カーボンフットプリントの削減と持続可能性の向上は、バッテリー業界全体における精製プロセス改善の重要な推進要因となっています。
バッテリーおよび正極材、負極材の製造
国際エネルギー機関(IEA)の予測によると、リチウムイオンバッテリーの世界需要は2040年までに最大4,000GWhに達すると見込まれています。 この成長を後押ししているのは、持続可能性を促進する各国の政策、バッテリー技術の進化、そして電気自動車(EV)の価格低下による普及拡大です。さらに、太陽光や風力といった再生可能エネルギーの不安定な発電特性を補うエネルギー貯蔵技術の需要も、バッテリー市場の拡大を加速させています。 こうした急速な需要増に対応するためには、より高効率なバッテリー化学(Battery Chemistry)と生産プロセスの最適化が不可欠です。特に、生産工程の効率向上と環境負荷の低減は、業界全体の持続的成長を支える鍵となっています。
バッテリーリサイクル
リチウムイオンバッテリー需要の急増により、リチウム・コバルト・ニッケルといった重要鉱物の持続可能性と供給確保が大きな課題となっています。 バッテリーのリサイクルは、採掘による環境負荷を軽減し、限りある天然資源への依存を抑制する有効な手段です。使用済みバッテリーから有価物を回収・再利用することで、循環型経済(サーキュラーエコノミー)を推進し、将来のバッテリー生産における持続可能なサプライチェーンの構築に貢献します。 さらに、リチウムイオンバッテリーのリサイクルは、製造過程で発生する温室効果ガス排出量の削減にも重要な役割を果たします。国際エネルギー機関(IEA)によると、リサイクルによって一次資源の需要を大幅に抑制でき、2050年までにリチウムとニッケルの需要を25%、コバルトの需要を40%削減できる可能性があるとされています。
Process overview
