遠心分離機とは
創始者が19世紀、世界で始めて遠心分離機を実用化した「アルファ・ラバル」。分離技術の先駆者が遠心分離機を解説します。
遠心分離機の分類(工業用)
“大量処理” “コストパフォーマンス” “信頼性” のニーズに応えるコンパクトな高性能遠心分離機遠心分離機は、遠心力を利用して液体中に含まれる比重(密度)の異なる物質を分離する装置で、その最大のメリットは遠心力だけで処理液中に分散した固体や液体を効率よく的確に分離できることです。
工業用遠心分離機は、大きく「遠心沈降機」「デカンター」「遠心脱水機」に分類することができ、ディスク型遠心分離機は「遠心沈降機」の中にあります。
ディスク型遠心分離機は、回転軸の回りに下に開いた円錐形(傘型)のディスク(分離板)を積み重ねることにより1m2という据付面積で10,000m2以上の広大な分離沈降面積が達成でき、小さなスペースで大量・高速の分離が可能です。ディスクは0.5mmの間隔で数百枚積み重なり、ディスクの間に5,000~15,000Gの遠心力がかかって分離は瞬時に終了。粒径0.1ミクロン、比重差2%までの固/液、液/液分離を連続的におこなうことができ、お客様がお求めの“大量処理” “コストパフォーマンス”“信頼性” の3つのニーズに応えます。
ディスク型遠心分離機の原理
遠心分離機は処理液中の重い物質の重力による自然沈降を、遠心力によって時には重力の10,000倍を超える力に変換して沈降分離を促進させる仕組みです。処理液中に浮遊する固体粒子が落下する際の重力沈降速度Vgはストークスの法則で表せます。
この式から分離する2物質の比重差や固形分の粒径が大きく、処理液の粘度が小さいほど、より早く分離することが分かります。液中の物質を沈降法で効率よく分離するには、
❶粒子の重力沈降速度Vgを上げ
❷粒子の分離面までの沈降距離を短くする、の二つの方法が考えられます。
❶はストークスの法則の重力加速度gを遠心力に置換えることで沈降速度を上げる。
❷は底面積を広くすることで分離面までの沈降距離をみじかくする。
この二つの原理がもとになりディスク型遠心分離機のアイデアへと発展しました。
ディスク型遠心分離機
先ほどの沈降距離を短くするために容器の中に板を入れると、底面積の広い容器を使わなくても沈降距離を短くできます。
さらに、薄い板を何枚も重ねるように傾斜させて挿入することにより大量分離、連続フローに対応でき、より早く大量に沈降・分離します。そして遠心力を使うために円筒形の容器の中に薄い板の代わりに傾斜の付いた円錐状ディスクを挿入し、処理液の入口・出口を設けて「ディスク型遠心分離機」のボウルが完成しました。固/液分離の場合、ボウルの中に供給された処理液はディスク間で瞬時に固形分と液体に分離されます。固形分はディスク間上部を遠心力方向に移動し、液体はディスク間下部を通って中央に分配されます。ディスク型遠心分離機処理量Qは理論的に次の式で表されます。
ここでΣはディスクの物理的形状と回転速度を組合わせた分離沈降面積と呼ばれるもので、
と表されます。すなわち、ディスク型遠心分離機の性能は分離沈降面積Σによって決まります。一般に円筒(シャープレス)型遠心分離機は回転による遠心力だけでΣを上げていますが、処理能力アップの条件は遠心力だけではなく、Σの式でも分かるようにディスクの枚数、大きさ、角度なども大いに関わっています。この要素に着目して処理能力を飛躍的に高めたのがディスク型遠心分離機というわけです。ディスクの採用により分離沈降面積Σが遙かに大きく取れるようになりました。
分離技術試験室
分離機製品はこちらから
[固ー液分離]クラリフィケーション(清澄)
[液ー液分離]ピューリフィケーション(清浄)、コンセントレーション(濃縮)
アルファ・ラバル独自性と経験
遠心分離機の能力が“Σ” によって表されることは前述の通りですが、このΣの値がアルファ・ラバルの長年の実績データからずれることが分かりました。アルファ・ラバルでは3世紀に及ぶ豊富な経験に基づき、分離沈降面積“Σ” を補正した遠心分離機能力指標“KQ”を常用しています。
アルファ・ラバルは実績・実験を重視した“経験主義” に裏付けされた研究開発を推進しています。また、その他の例を上げますと内部の流動状態が分かるような透明プラスチックボウルを試作し、実際に給液して液の流れをきめ細かく観察することによって、ディスク形状やボウル構造などに改良を加えています。
分離機のパイオニア
1877年、アルファ・ラバルの創始者が遠心力を利用した連続式クリーム分離機を世界で初めて実用化。