Tecnoparco Valbasentoにおける水循環の加速 ― ZLDシステムによる操業継続の実現
イタリア・バジリカータ州に位置するTecnoparco Valbasentoは、国内でも有数の水資源に恵まれた地域にあります。しかし近年、気候変動の影響により水不足が発生し、この地域で通常行われている事業活動を継続するには十分な水を確保できない状況に直面しました。 そこで導入されたのが、Zero Liquid Discharge(ZLD)システムです。このシステムにより、水を再生・循環させる新たな水フローが生み出され、Tecnoparco Valbasentoは安定して蒸気を生成できるようになりました。その結果、水資源の制約を受けることなく、すべての事業活動を滞りなく継続することが可能となっています。
更新日 2025-12-24環境を守りながらエネルギーを供給
イタリア・バジリカータ州に拠点を置くTecnoparco Valbasentoは、サービスおよびユーティリティを提供する事業者です。主に再生可能エネルギー由来の電力をはじめ、熱エネルギー、工業用ガス、産業用水を生産・供給し、環境に配慮しながらヴァル・バセンタ地域の産業発展を支えています。
同社のサービスには、産業、自治体、民間企業から排出される排水の処理も含まれます。排水の化学組成に応じて複数の処理プロセスが採用されており、Tecnoparcoは最適な利用可能技術を適用するため、環境負荷の低減と再利用可能な清浄水の回収を目的とした新たな設備を構築してきました。
イタリアでも有数の水資源に恵まれた地域に位置しているにもかかわらず、近年、Tecnoparcoは気候変動の影響による水不足に直面しました。確保できる水量は通常の操業を維持するには不十分でした。この課題を解決したのが、Zero Liquid Discharge(ZLD)システムです。このシステムにより、蒸気の生成を継続することが可能となり、操業を止めることなく事業を維持できるようになりました。
ZLD(Zero Liquid Discharge)
AlfaFlash 蒸発器と、オプションとしてデカンタ型遠心分離機を組み合わせたZLDシステムは、排水や各種液体から固形分を効率的に除去します。このプロセスにより、溶解物質や懸濁物質といった有価物を回収し、再利用または販売することが可能になります。また、水の再生利用を実現することで、廃棄処理コストの削減にも貢献します。
仕組み
水はAlfaFlash 熱交換器に供給され、加熱された後、フラッシュオリフィスを通過します。この過程で流体は濃縮液と蒸気に分離されます。これらはサイクロンセパレーターに送られ、遠心力によって分離がさらに促進されます。蒸気は上昇し、ミストや液滴が除去された後、濃縮液は再循環ポンプへと送られます。一部のサイドストリームはデカンタに送られ、水と固形分が分離されます。蒸発した水は凝縮されて再利用されるため、液体廃棄物を一切排出しないプロセスが実現します。
プロジェクト概要
産業プロセスでは大量の排水が発生し、これを適切に処理・再利用することが求められます。こうした背景から、ZLD(Zero Liquid Discharge)システムの開発が進められました。
Tecnoparcoは、産業・都市排水処理を専門とするEPC企業であるHydrosと協業しました。Hydrosは、エンジニアリング、建設、設置までのすべてを自社で一貫して担当しています。
本プラントはイタリア国内でも類を見ない存在であり、高度に汚染された産業排水を処理し、水および固形分を回収して再利用します。副産物として生成される塩類は、再利用するか、より効率的な方法で処分することが可能です。液相はすべて回収され、蒸気生成、脱塩水、その他の用途として、工業団地内で再利用されています。
ZLDシステムは、複数の技術を単一の処理チェーンに統合しています。逆浸透(RO)で濃縮された液体は、アルファ・ラバルの二段式蒸発プラントに送られ、そこで水分が蒸発され、固形分が結晶化されます。生成された結晶はデカンタ型遠心分離機によって回収され、95%を超える高い乾燥度を実現しています。
このプラントは、低圧蒸気2,800 kg/時のみを使用して、約9 m³/時の水を処理しており、非常に効率的なシステムとなっています。
なぜアルファ・ラバルなのか
Hydrosは、本プラントを最先端の技術で構築することを目指していました。本設備は熱交換を基盤とするシステムであるため、この分野のマーケットリーダーであるアルファ・ラバルは必然的な選択でした。
Hydrosとアルファ・ラバルのエンジニアリングチームが緊密に連携したことで、Tecnoparcoは高性能かつ効率的なプラントを実現しました。このパートナーシップは、今後のプロジェクトにおいても継続される予定です。
ZLDの導入効果
「アルファ・ラバルのZero Liquid Discharge(ZLD)システムをプロセスに導入することで、最大98%の水を回収・再利用することが可能です。これにより、環境への影響と廃棄処理コストの双方を削減できます。本システムは、他の技術では限界に達してしまうような高濃度条件下においても、大量の負荷物を確実に分離できるよう設計されています。」
— Samy Diab(アルファ・ラバル グローバルセールス/廃水蒸発・ZLD担当)
アルファ・ラバルは100年以上にわたり、エネルギー効率の向上、排出量の削減、水および廃棄物の回収を促進する革新的なソリューションを提供し続けています。