アサヒビールが挑戦した 新市場の開拓と アルファ・ラバルの 脱アルコール技術

日本を代表するビールメーカーの1つであるアサヒビール株式会社では、アルコール濃度を可能な限りまで抑えたアルコール飲料の開発にあたり、アルファ・ラバルの脱アルコール製造装置を採用しました。麦の旨味はそのままに、ベースビールからアルコール分だけを取り除くことに成功し、「スマートドリンキング(飲み方の多様性)」として多様な人々が自分に合わせて選択することができるアルコール飲料の開発に取り組んできました。その1つとして着目したのが、低アルコール度数及びノンアルコールのビールであり、日本のビール業界で初めて「微アルコール飲料」の商品化を実現しました。

更新日 2024-04-18 執筆者 Megumi Akimoto

アルコール飲料を取り巻く市場の変化

アルコール飲料の市場は大きく変化しており、日本の酒類・飲料メーカーの多くが、SDGsに取り組む企業目標として、健全なアルコールとの関係に関する施策に取り組んでいます。ビールを中心とした酒類、飲料、食品で多様なブランドを世界的に展開する、リーディングカンパニーであるアサヒグループホールディングス株式会社でも、「責任ある飲酒」をマテリアリティとしています。日本において酒類事業を展開するアサヒビール株式会社では「スマートドリンキング(飲み方の多様性)」として多様な人々が自分に合わせて選択することができるアルコール飲料の開発に取り組んできました。その1つとして着目したのが、低アルコール度数及びノンアルコールのビールです。

開発が始まった当初、日本のノンアルコールビールは発酵させずに調合で作られる商品が主流でした。今回のプロジェクトを担当したアサヒグループホールディングス株式会社のGlobal Chief Brewer 久保田 順氏は、低アルコール飲料の開発に取り組んだ背景について、企業としての社会的意義を追求すると同時に、調合で作るノンアルコールビールを普通のビールにいかに近づけることができるのか、技術面からも開発への必要性を感じたと当時を振り返ります。

「日本のビール会社各社が色々なノンアルコール製品を開発し、ノンアルコール飲料の市場は成熟していきました。ノンアルコール・低アルコールビールのニーズは社会的にもどんどん高まっていく一方で、やはり通常のビールのマーケットサイズやお客様の満足度と比べると、越えられない壁がある、お客様が満足してもらえる「味」になっていないのではないかというのが技術面からの課題でした。原料も異なり、高度な技術を要する発酵のステップを踏まない調合のノンアルコールビールでは、どうしても醸造して作るビールの味には辿り着かない。どうにかお客様に満足していただける味を追求しようとなった時にご紹介いただいたのが、これまでのアプローチとは全く違う、アルファ・ラバルの脱アルコール製造装置のソリューションです。」

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脱アルコールモジュール Dealc

  • 低温かつ短い滞留時間での単一パスストリッピング:高品質で味わい深い脱アルコール製品を実現
  • 高い流量 - 0.0%および0.5%未満のビールで毎時最大100 hl
  • 設置と統合の容易さ:
    工場生産型でモジュール式のプラグインソリューションにより、
  • ランニングコストとメンテナンスコストの低減:
    (回転部品のないストリッピングカラム)
  • 安心の単一ソース供給

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アサヒグループホールディングス株式会社
Global Chief Brewer
久保田 順 氏

課題解決に導いた技術

アルファ・ラバルの脱アルコール製造装置は低温かつ短い滞留時間での単一パスストリッピングが特長で、低温かつ低圧できわめて効果的にアルコールを除去し、高品質で味わい深い脱アルコール製品の製造を実現します。当社は、約25年以上にわたりアルコール分0.0%のノンアルコールビール及び0.5%未満の低アルコールビールの製造に携わり、世界を牽引するストリッピングカラム技術を有しています。また、ストリッピングカラムに回転部品がないため、ランニングコストとメンテナンスコストも低減することもメリットの1つです。

ヨーロッパを始めとする海外では、既に当社の脱アルコール製造装置の実績がありました。久保田氏は調査のためにアルファ・ラバルの担当者と共にデンマークを訪れ、実際に脱アルコール製造装置で製造された脱アルコールビールを試飲し、その品質の高さを実感したと話します。 

「それは、私たちが求めたビール本来の味でした。これまでのノンアルコールビールとの違いは明らかで、上層部も含めた他の社員からも高評価を得ることができました。新しい技術導入には投資・経営判断が必要なので通常は多くの時間を要しますが、実際に試飲してその技術品質の高さを確認できたというアルファ・ラバルの実績も後押しし、早いスピードで進めることができました。また、既存工場の設備を活かしながら私たちの目指す生産規模に対応できるかというのも重要な点でしたが、最終製品に持っていくことができるアルファ・ラバルの高い技術力と、担当者との長きにわたる信頼関係のもと、スムーズに導入に至ることができました。」
 
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そして脱アルコール製造装置はアサヒビールの福島、吹田工場に導入され、2021年に日本市場に初めてアルコール分0.5%の微アルコール飲料「ビアリー」が紹介されました。アルコール度数に関わらずビール本来の味わいを楽しむことができる品質の高さが話題となり、同年のアサヒビールの「ビアリー」を含むアルコールテイスト飲料の売り上げは前年比126%を記録。消費者に微アルコール飲料という新しい選択肢を提供しました。

アサヒグループのグローバルプロジェクトとして、日本だけではなく、イタリア、チェコ、オーストラリアにおいても導入され、0.0%のノンアルコールビール製造に利用されています。

更なる市場拡大に向けて

久保田氏は今後の展開について、「2024年上半期に、この技術を活用して開発した0.00%のノンアルコールビール「アサヒ ゼロ」が全国展開されました。これまで一部地域のみで限定販売されていましたが、好評を得ることができたので拡大して販売することになりました。ノンアルコールビールの市場は更に広がっていくと考えています。そのためには美味しさであったり、人と人をつなぐ役割を果たす雰囲気づくりの一端を担ったり、ビールの持つ多様な価値をもっと伸ばしていかないといけない。そこに技術面でも工夫を凝らし、より高みを目指していきたいと考えています」と述べています。

「アルファ・ラバルの脱アルコール製造装置の導入によって、当社ではサステナビリティへの貢献だけでなく、競争力の向上を実現しました。今後もグローバルで通用する新しい技術にアンテナを張り、私たちが目指すことと、アルファ・ラバルの新しい技術がマッチして、 シナジーを生み出して行ければよいと思います。」

 

 

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脱アルコールモジュール

完全に自動化されたアルファ・ラバルのビール脱アルコール機は、単一パスでアルコールを効率的かつ繊細に取り除き、熟成した味わいを持つビールを製造できるプラグインソリューションです。 これらのモジュールは、醸造業者が健康的な選択肢を探している人々をターゲットにした低アルコールおよびノンアルコールビール市場に参入できるよう設計されています。この市場は急成長を続けており、収益を見込めます。 モジュール設計により、ノンアルコール醸造を簡単に始めることができます。大規模な設備投資は必要ありません。

ビールと炭酸飲料製造

脱アルコールモジュール詳細

 

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