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繰り返す損傷 - 触媒粒子とエンジンの摩耗、その1

これまでは一つの業界として全体を考える方法が一般的でした。 世界の農場、工場、鉱山からの生産品は、船舶によってあらゆる地域の港に運ばれます。見わたす限りの嵐、高層建築の高さの波、これらはすべて現場での日常的な風景です。 しかし、業界が直面している最大の問題の一つは、ごく微小な物質から発生するものです。 さらに、この問題が世界の船隊の安全な航行に及ぼす脅威は深刻なものになるかもしれません。

2020年初めに発効する新しい規制体制は、世界の舶用燃料の種類と入手可能性に大きな変化をもたらします。 エンジンを確実かつ安全に運転する船舶運航業者にとって、これまで以上の深い理解と高度に洗練された燃料処理戦略が必要になることは必至です。 今後の課題がどのような範囲に及ぶかを正確に予測することは、今もなお不可能です。 とはいえ、問題を回避できるかどうかは、今後数か月に船舶運航業者が講じる対応策によってその多くが決定するでしょう。

変化する燃料

2020年1月1日、世界の海運業界は低硫黄時代に入ります。これはMARPOL 73/78条約以来の業界最大の規制上の変化であり、過去に経験したことのない最大の運用上の変更となります。 施行当日から、すべての船舶は、燃料中の硫黄含有量を0.50パーセント(mass/mass)に制限するという国際海事機関(IMO)が定めた厳しい規制に従う必要があります。

0.50パーセントという制限値は、排出規制海域(ECA)での0.10パーセントの制限に追加されたもので、2012年に導入された現行の3.50パーセントよりもかなり低い制限値です。 IMOは、環境や人間の健康に勝利をもたらす新たな制限が何かを公正に定義していますが、海運業界にとっては、これが非常に厄介な問題となりつつあります。 なぜかと言うと、環境上の危険の排除が意味しているのは、残念なことに、CAT Fines (触媒粒子)と呼ばれる微小な粒子の機械的な発生であり、この粒子を除去しないとエンジンが故障しかねないからです。

舶用燃料油は、魅力的な物質として説明できるものではありませんでした。 精製業者は、原油からスタートし、蒸留カラムの最上部から高価値の製品を蒸留して抽出します。 ガスやガソリンをはじめ、航空燃料やディーゼル、さらには潤滑油、そして残余物(濃い黒い残渣)にいたるまでのあらゆる生成物が船を動かし、ビチューメンの製造に使用されます。 外観はきれいではありませんが、これが文字どおり現代世界の構築に貢献しました。

硫黄の問題

エンジンで化石燃料が燃焼すると、硫黄酸化物(SOx)が放出されます。これが大気中にあると、さまざまな健康上および環境上の問題の一因となります。人や動物が呼吸器疾患を発症したり、土壌や水質が酸性化したりします。

硫黄はすべての原油中で自然発生し、蒸留プロセスの最高沸点で残留する留分中に高濃度で存在します。 これはつまり、2020年以降はこの硫黄に対処するために燃料生産を変更する必要が生じるということであり、船舶運航業者はかつてないほど困難な燃料選択上の問題に直面することになります。

液化天然ガス(LNG)で運航する船舶は問題なく対応できますが、LNG船は世界全体で見るとごく少数であり、投資コストの高騰と供給インフラの不足により、今後数十年はこの状態は変化しないと見られています。 他の多くの船舶は、高硫黄燃料油(HSFO)の排ガスの硫黄含有量を規定のレベルまで浄化するためにスクラバー技術に依存しながら、この燃料油の燃焼を続行するでしょう。 しかし、ほとんどの船隊にとって2020年以降の時代とは拡大を続ける低硫黄留出物、混合物、さらに少数の植物油由来の新しい燃料からの選択を意味することになるでしょう。

2020年がすべてを変える

新種の燃料はいずれも、考慮を要する運用上および経済上の変動しやすい特質があります。 このようなあらゆる変動についてこの記事で詳しく述べることはしませんが、安全で信頼性の高いエンジン、ポンプ、および他の機器の動作にとって、粘度、潤滑性、および温度の変動は影響が大きいという点に注目する必要があります。

触媒粒子に注目する

しかし、低硫黄時代に存在するあらゆる変動の中で、潜在的に最も有害であると考えられているのは、触媒粒子が存在することです。 触媒粒子は、海運業界ではこれまで長く知られてきた管理可能な一つの事実ではありましたが、今後の低硫黄時代には、触媒粒子が船のエンジンと運航業者の予算にとっての危険因子として新たに注目されることになります。

では、これはどのようなものでしょうか?

触媒粒子はどのように生成されるか

現代の製油所では、最初に常圧蒸留および真空蒸留によって、最も揮発性が高く付加価値のある生成物を蒸留カラムの最上部から除去します。 その後、熱および触媒プロセスを使用して、残りの原油をさまざまな留分に「分解」します。 接触分解では、精製業者は物理的触媒を添加して油性分子を破壊します。

使用される触媒は、非常に多孔質かつ極めて硬質のアルミニウムとケイ素の鉱物化合物である、さまざまな形態の合成結晶性ゼオライトです。

触媒は高価なため、製油所はできるかぎりの回収と再利用を行います。しかし、これもある地点を超えると、それ以上の努力が現実的でなくなり、経済的にも見合わなくなります。 精製の最後に残るのが触媒粒子です。 バンカーの燃料内に残留します。 そして船舶に流入します。

燃料基準の設定

舶用燃料の規格は、バンカー燃料中の触媒粒子の濃度を制限する国際規格ISO 8217によって設定されています。 最新の規格では、燃料生産では60ppmまでに制限されています。 この制限値は、根本的には妥協案です。仮にこれより低い値が設定されると、世界のバンカー燃料の安定供給はできなくなります。 しかし、微粒子触媒は60ppmでも重大なエンジンの問題を引き起こすため、MANやWärtsiläなどのメーカーは、エンジンに入る燃料の微粒子触媒の濃度を15ppm以下にすべきであると推奨しています。

触媒粒子の特質

バンカー燃料内の触媒粒子の形状は物理的には不規則で、大きさはサブミクロンサイズから最大約100μmまでで、おおざっぱに言うと、ほこりなどの斑点サイズから髪の毛の幅までとさまざまです。 密度にも変動がありますが、一般に重質燃料油(HFO)よりわずかに高い密度です。 大きい触媒粒子は油に沈着しますが、低密度の小さい粒子は沈着しません。

しかし、触媒粒子のあらゆる物理的特性のなかでも、船舶で最も問題となるのはその硬さです。 触媒粒子はきわめて硬質です。モース硬度計の単位で最大8.2(ダイヤモンドは10)であり、鋼鉄の表面に引っ掻き傷が付きやすいほか、表面に埋め込まれることもあります。

発生する問題

触媒粒子がインジェクターを通過する際、シリンダーライニングとピストンリングの間に約3〜5μmの間隔で閉じ込められる場合があります。 それより大きい粒子は磨耗を引き起こす可能性があります。 ピストンのストロークごとに、微粒子触媒は滑らかな表面によって研削され、時間の経過とともに蓄積するトラックが刻まれます。 燃料ポンプ、インジェクタ、バルブ、その他の部品も危険にさらされます。 また、さらに微小な粒子によっても重大なダメージを受ける場合があります。

この種の研削による損傷について、長期にわたって機械を正常に使用した結果による摩耗と見なしがちです。 また、多くの場合、それで問題がないかもしれません。 しかし、高濃度の触媒粒子は、ごく短期間に、深刻かつ壊滅的な被害を引き起こす場合があります。

オンラインで入手可能なあるレポートでは、わずか100時間の使用でエンジンを動作不能にした触媒粒子の被害について説明しています。 エンジニアがエンジンの装備を取り除いて内部を調査した結果、「すべてのピストンとライナーの損傷が壊滅的だったため、交換を余儀なくされた」ことが判明しました。

この種の故障にかかる費用は言うまでもなく極めて高額で、レポートによると、請求額は30万~150万米ドルということです。 これは、触媒粒子が事業者にとって問題なだけでなく、保険の業界にとっても重大な懸念事項であることを示しています。

眠っていた問題の表面化

触媒粒子は新しい問題というわけではありません。 1970年代に、原油価格の高騰により、製油所がより価値の高い製品を原油から抽出せざるを得なくなったため、接触分解が普及しました。 その結果、触媒粒子の被害について初めてのレポートが1980年代に発表されるようになりました。 触媒粒子を海上で除去することは相変わらず困難ではありますが、汚染レベルを下げるための舶用機器(この記事の第2部で説明します)が基準にしているのは、完成度が高く一般によく知られている技術です。

残念なのは、この技術がよく知られていることから、業界では現状に対する一種の満足感が広がっています。 2020年以降、仮に触媒粒子の汚染が予想どおりに進んだ場合、現行の知識や事業活動を更新しない事業者にとって、この満足感が非常に高いコストに転じる可能性があります。

最近のMarine Propulsion(海洋推進)の記事は、多くの事業者が改めて着目せざるを得ないほど衝撃的なものでした。 この記事はExxonMobilによる400,000件を超える石油サンプルの分析を引用し、43%の船舶が触媒粒子に関する深刻な問題を抱えている可能性があることを明らかにしました。 この潜在的な問題の一部しか認識されていないとしても、金銭や時間にとって重大な問題であり、混乱が引き起こされる危機であることに変わりはありません。

また、MANのPrimeServチームからも、3年間に発生した226件のシリンダーライナーの損傷のうち、190件(84%)に触媒粒子の関与が判明したと報告されています。

上記で説明したように、触媒粒子は接触分解と硫黄除去の副産物です。 油の接触分解が増えて硫黄が除去されるようになるほど、触媒粒子の含有レベルは高くなります。 Braemarのポール・ヒル氏が簡潔に説明しているように、「これはエンジンと環境の間の根本的なトレードオフです。 少ない硫黄と少ない触媒粒子は両立できません」

OPEC World Oil Outlook 2040では、2017年から2022年間にかけて、年間1億3,800万トンの接触分解の処理能力が追加されると予測しており、さらに多くの触媒粒子が世界中のバンカーに流入することは確実です。

高レベルの触媒粒子という問題に加え、事例観察で示しているのは、今後生産が始まる新しい触媒により、さらに硬質の触媒粒子が燃料に入り込むということです。 さらに、それほどの悪影響でなくても、低硫黄燃料は重質油より潤滑性が低い傾向があり、これは摩耗の悪化を意味します。

現在の硫黄の上限規制による副次的な影響は、触媒粒子のレベルとそれに関連する悪影響が大幅に増加していることです。 2020年の規制の準拠への対策強化は、この問題をまったく新しいレベルに引き上げる可能性があります。 ロイド・レジスターのFuel Oil Bunkering Analysis and Advisory Service(FOBAS)(燃料油補給分析およびアドバイザリーサービス)は、世界中の港でバンカーの品質を監視し、問題が発生した場合は警報を発します。 事業者が同社やこれ以外のレポートに細心の注意を払うべきであることは言うまでもありません。 ただし、触媒粒子による損傷は、燃料がtISO 8217に完全に準拠している場合でも発生する場合があることに注意する必要があります。

要するに、旧来の問題はすっかり様変わりしているということです。 触媒粒子に関する議論の第2部では、解決策を模索し、事業者が対策を強化するにはどのような方法が必要か、または多大なコストへの対応について検討していきます。

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