心に響く製品

スウェーデンのオアタリー社は、小規模ながら、健康食品の分野で成功を収めてきました。同社が生産を行っているのは心臓や胃に働きかける効果があるだけでなく、料理の味を引き立てる食品です。

更新日 2023-11-28 執筆者 Birgitta Lundblad

オアタリー社は昨年8月、スウェーデン最南端のランツクルーナ郊外に工場を開設しました。

これによって高まる需要に対応できない、もどかしい状況が解消されました。

私たちが新しい工場を訪れたのは、同社が量産を開始して約3ヵ月後のことでした。それ以前は、サブサプライヤーである乳業メーカーのスコーネメイエリーエ社がルナープにある施設でオアタリー社の製品の生産をしていましたが、需要が生産能力を超えていました。

オアタリー社の代表取締役を務めるパー・エリク ・ニルソン氏は、以下の様に述べています。「ここ数年、当社製品に対する需要は非常に高まっており、ここ1年ほどはその需要を満たすことがきませんでした。そのため、年間2,500万~3,000万リットルの生産が可能な新しい工場に大変満足しています。

この新しい工場では、初期不良はほとんど発生せず順風満帆な船出となり、生産量が増加し続けています。おかげで、ようやく在庫の確保ができるようになりました。今年(2006年)の生産量は約1,000万リットル、売上高は1億SEK(約16億6,000万円)を見込んでいます。来年以降は、年間30%以上の成長を期待しています。当社は消費者の健康志向から大きな恩恵を受けており、市場の平均年間成長率の約20%を超える勢いで成長し続けています」。

天然の健康食品

オアタリー社は、オート麦ドリンク、調理用クリームの代替品、バニラソース、アイスクリームなど、オート麦をベースとした独自の非酪農食品を開発、生産、販売しています。これらの製品には、乳糖、乳タンパク質、大豆が含まれていないため、乳糖不耐症患者や、乳タンパク質、大豆タンパク質にアレルギーのある人でも摂取していただけます。また、健康志向の高い消費者にも幅広く好まれており需要が高まっています。

オアタリー社の製品が健康に良いことは言うまでもありません。炭水化物、タンパク質、脂肪のバランスが良く、人々の栄養必要量を満たしています。オート麦に天然成分として含まれる脂肪は、一価不飽和脂肪の割合が多く、良性の脂肪酸化合物です。また、オート麦にはコレステロール値を下げる水溶性食物繊維も豊富に含まれています。

オアタリー社では、栄養価が最も高いことで知られるスウェーデンのメラードーランで特別に栽培されたオート麦を年間約2,000トン加工しています。

スウェーデンで65%のシェア

オアタリー社が特許を取得しているオート麦ドリンクは、10~15年にわたる研究開発の成果であり、良質のオーツ麦を液状に変質させることを可能にしました。オアタリー社は、世界で初めてオート麦飲料を販売し、この分野では世界的リーダーです。研究開発はルンド大学と密接に関係しており、リカード・オステ教授は、研究室を国際的な企業へと発展させる上で重要な役割を果たしました。

 世界初のオート麦飲料は、1995年にイギリスで販売されました。1996年から1999年にかけて、オアタリー社の製品はスカンジナビア地方やその他のヨーロッパ諸国で販売され、2001年以降、幅広い種類のオアタリー社製品が市場に流通しています。

パー・エリク・ニクソン氏は以下の様に述べています。「これまでは、売上の約80%を占めるスウェーデン、フィンランド、イギリスの3つの主要市場に重点を置いてきました。当社はスウェーデンではマーケットリーダーです。ICAの自社ブランドであるソールハーブレを含めると、スウェーデンの非酪農製品市場全体の65%を占めています。当社はこの3カ国で、日用雑貨店チェーンでの販路を築くために大規模な投資を行いました。その他の市場では、健康食品店で販売しています。当社は営業チームを持たず、さまざまなパートナーを通じて市場を開拓しています。スウェーデンとフィンランドでは、スコーネメイエリーエ社が販売チャネルとなり、アイスクリームはシーアアイスクリームが販売を担当しています。その他の国では17の販売業者と提携しています」。

パー・エリク・ニクソン氏は、さまざまな国のテトラパック社で12年間働き、現在の仕事に生かせる貴重なキャリアを得ることができました。「中東やヨーロッパでミルクを販売し、その健康上の利点を伝えることは、オアタリー社が現在行っていることと共通しています」と続けます。

消費者の嗜好

オアタリー社が最も力を注いでいるのが、ミルクの代わりに飲める自然な風味のHおよびH+(ビタミンとカルシウムを強化した)飲料で、「ミルク要らず」というスローガンで販売されています。この製品は同社の売上の80%を占めています。

オアタリー社のマーケティング部長を務める、セシリア・ハンセン氏は言います。「HおよびH+は、ソフトで滑らかなオート麦の風味を持ち、脂肪分は0.7%または1.5%です。飲んでもよし、料理やお菓子作りに使ってもよし」。

「オーツのおいしさと栄養価の高さは、心臓や胃の両方に良い影響を与えるものですので、この点を強調して積極的にプロモーション活動を進めています」。

さらに彼女は、アメリカとイギリスの市場で、オアタリー社のオート麦飲料を主要な大豆製品と比較するブラインドテストを実施した結果、90%の人がオアタリー社の味を絶賛したことを誇らしげに語っています。

オアタリー社のもう一つのベストセラーは、クリームの代替品となる野菜製品iMatです。iMatに含まれる脂肪分はわずか13%で、そのほとんどが不飽和脂肪酸です。

オアタリー社の製品には、牛乳アレルギーの子どもたちに人気のあるチョコレートやストロベリーなどのフレーバーのオート麦飲料や、りんご、緑茶、いちご、ワイルドベリーなどのフレーバーヨーグルト飲料もあります。また、オート麦を使ったさまざまなフレーバーのアイスクリームや、パンケーキの生地やバニラソースなど特徴的な商品も生産しています。

「私たちのマーケティング活動は、2つの主要なターゲットグループに向けられています」とセシリア・ハンセン氏は続けます。「1つ目は、食事療法士を通じてアプローチするアレルギー体質の人たちです。このグループは、比較的ターゲットにしやすく、商品の継続的な購入が見込めますが市場規模に限りがあるグループです。もうひとつのターゲットは、健康志向の高い一般の消費者ですが、アプローチがより難しくなります。これらの人々は多くの製品の中から選ぶことができるので、オート麦や当社の製品の利点を理解してもらうために多くのリソースを投入しなければなりません」。

日本での興味深いプロジェクト

これまでオアタリー社は世界市場への進出を躊躇していました。現在当社は非酪農食品市場の0.5%を占めています。スウェーデンで65%のシェアを獲得していることを考えると、世界市場での可能性は計り知れないものがあります。

将来の可能性を予感させる興味深い取り組みとして、日本の大手食品会社との協力プロジェクトが挙げられます。オアタリー社は、自社製品の乾燥作業を行うスウェーデンのパートナー企業の協力を得て、日本の食品会社向けに粉末状のオート麦ベースの生産を開始しました。粉末は日本で再結合され、日本の消費者の好みに合わせたフレーバーをつけ、包装されます。「幸いなことに、この工程は最終製品の味や栄養価にはまったく影響しません。現在は、日本でのプロセスを微調整し、どのような機器を選べばよいか、オート麦製品の利点をどのように伝えればよいか、顧客にアドバイスしている段階です。

世界最大の健康食品市場である日本でのこのテストプロジェクトの結果を心待ちにしています。このプロジェクトが進めば、他の地域への進出も検討できるでしょう。しかし、私たちはまだまだ中小企業ですので、一歩ずつ確実に進んでいかなければなりません」とパー・エリク・ニルソン氏は締めくくります。

結束の強い技術チーム

スウェーデンのランツクルーナにあるオアタリー社の新規工場での生産工程は、オート麦の粒を水と混ぜて粉砕することから始まります。その後の加工工程で、デンプンは主に麦芽糖に変換され、オート麦ベースの心地よい丸みのある味と柔らかさを生み出します。

水溶性食物繊維は製品に残りますが、不溶性食物繊維の70~80%はアルファ・ラバルFoodec 510デカンタで除去され、製品組成が向上します。滑らかな製品を得るために均質化した後、消費者向け製品へのさらなる加工されオート麦ベースは最終的に無菌熱処理され、250ミリリットルと1リットルのテトラパック無菌パッケージに包装されます。

この工場では、アルファ・ラバルの熱交換テクノロジーを搭載したワイドストリーム型熱交換器が多数導入されています。Frontlineは目詰まりを抑える機能に優れ、食品衛生分野に適しています。

アルファ・ラバルの流体機器は、さまざまなタイプやサイズのポンプ約20台、SRC(遠隔自動制御)バルブ230台、Think-Top制御ユニット付きUnique ミックスプルーフバルブ約30台など、全行程で使用されています。

アルファ・ラバルはエンジニアリング会社、エディテック社を通じて機器を提供しています。「アルファ・ラバルを選んだのは、信頼できるサプライヤーとして以前から長期に渡って使用しているからです」とエディテック社の代表取締役ジャンオロブ・フォールス ランド氏は言います。

ランツクルーナのオアタリー、ルンドのエディテックとアルファ・ラバルの3社がわずか15分程度の距離に位置していることが、協力関係を成功させる上でとても重要です。ジャンオロブ・フォールスランド氏、オアタリー社の品質・技術開発管理者のウロフ・モッテンソン氏、アルファ・ラバルのノルディック地域における衛生設備部門で販売担当技術者グスタフ・オシュコ氏は、必要な時にいつでも会うことができるため、緊密にビジネスを進められるからです。

「アルファ・ラバルは、10年前にルナープのスコーネメイエリーネ社にある試験プラントで小規模生産を開始した当初から関与しており、それ以来、私たちの発展を見守ってくれています」とオロフ・モールテンソン氏は言います。「2002年にエディテック社にプロジェクト管理を委託した際、ルンドのイデオン研究開発センターに試験プラントを建設することを決めました。当社がアルファ・ラバルと良好な関係を継続することは当然のことでした。私たちは結束の強い技術チームとして一丸となって取り組み、アオタリー社の発展を支援するための議論を重ねています」と述べています。

(オリジナルの記事は2007年のものです)