Alfa Laval - 3 大陸のビール会社に聞くビールの世界

3 大陸のビール会社に聞くビールの世界

世界各地のビール会社は、変わり続ける消費者の好みにどのように対応し、現地の味に合わせているのでしょうか?『3大陸の醸造家の方々に、ビール業界の荒波を乗り越えていく術を伺いました。

更新日 2020-05-14

 

「それぞれの醸造所で作る味と香りはすべて同じものでなければなりません」

アサヒビール株式会社の中村勇一氏

味の普及:中村氏は、アサヒビールは日本中でビール文化を広めてくれたことをクラフト醸造家に感謝していると語っています。

 

 

ビールはどこにでもありますが、いつでも同じ味というわけではありません。

 

そして、どのビールがいつ、どこでヒットするかを予測することも時として困難です。たとえば、ブリテン諸島でギネスが作られたとき、このビールは寒さの厳しい冬の夜に飲むものでした。しかし今では、アイルランドよりも、蒸し暑いナイジェリアで多く飲まれるようになっています。ただ、世界中で飲まれているビールの 6 本に1 本がアルファ・ラバル製の装置を搭載したタンクから注がれていることから、当社は他に比べてトレンドを知りやすい立場にいると言えそうです。

 

アルファ・ラバルのお得意先であるブルックリン・ブルワリー社のカイル・ウィルソン氏(ニューヨーク)、アサヒビール株式会社の中村勇一氏(日本)、ハイネケン社のジュゼッペ・メレ氏(イタリア)の 3 名に、現在のトレンドにどのようにして対応しているのかを伺いました。「当社の市場は非常に多岐にわたっているので、味も実にさまざまです」と、ブルックリン・ブルワリー社で醸造プロジェクトの開発部長を務めるウィルソン氏は語ります。「当社では、アメリカ国内の市場に比べればはるかに知名度の低い市場にも、ビールを輸出しています」ビールの売れ行きがヨーロッパと日本では長きにわたって右肩下がりとなり、北アメリカでも横這いとなっている中、世界各地のビール会社は、アジア、南アメリカ、サブサハラ・アフリカを始めとする成長市場や、クラフトビールやノンアルコールビールなど健康志向の部門に目を向けています。


ブルックリン社では現在、同規模の中堅クラフトビール会社に比べて、輸出に回す製品の割合が大きくなっています。ウィルソン氏は味の好みの違いについて、移り変わりが激しく突き止められないと述べる一方、文化、気候、そして(ナイジェリアの例のように)歴史が関係していると考えています。「気温の高い地域ほど、樽で寝かせたバーレーワインが売れにくくなります」と、同氏は指摘します。「ブラジルのような地域では、冬が厳しい地域ほど黒ビールが飲まれません」

 

もう一つの違いは、ウィルソン氏が言う「クラフトビール軌道」上を、その国がどこまで進んでいるかということです。「こうした市場の中には、クラフトビールを復活させる動きが見られるところもあります。一方、アメリカではずっと前からそうした動きが始まっており、いくつものスタイルを経て、現在はサワービールのような進歩的なものや、苦味のとても強いインディア・ペール・エール(IPA)が注目を集めています」
イタリアは、伝統的にはワインを飲む国でした。しかし、クラフトビール部門がそのシェアを 2 倍以上に伸ばし、全商品の 10% に達したことで、ヨーロッパでは数少ない、ビール消費量が右肩上がりの国になっています。ハイネケン社はこの流れを受けて「スペシャルビール」カテゴリーを立ち上げ、最近ビッラ・モレッティから、「IPA の伝統を思い出させるビール」としてIPA Moretti を発売しました。


北イタリアのベルガモ近郊にある同社のコムーン・ヌォーボ醸造所で所長を務めるメレ氏にとって、この商品は、同氏の巨大工場に柔軟性があることの証明です。「コムーン・ヌォーボはイタリアで最大の醸造所ですが、今回のリリースで、市場の変化に素早く巧みに対応できること、ニッチな製品であってもイノベーションの中心であることを今一度示すことができました」ハイネケン社は、イタリア人の地元愛を掴むビールシリーズとして、5 つのタイプでこの国の 5 地域を表した Le Regionali も開発しています。メレ氏はイタリア人の環境意識にも着目し、醸造所の屋根に置いた太陽光パネルで発電し、その電力で作った Baffo D’Oro を 4 年前に発売しました。

 

日本では、1990 年代に業界の自由化が行われて以来、クラフトビールとマイクロブルワリーが活気を保っ ています。

 

アサヒビール株式会社は、自社のクラフトビール醸造所として、1995 年に TOKYO 隅田川ブルーイングを、2017 年に茨城マイクロブルワリーを開設しました。アサヒビール生産技術センターで室長を務める中村氏は、「アサヒビールは日本中でビール文化を広めてくれたことをクラフト醸造家に感謝している」と語っています。


ただし、同氏は、1990 年代の第一次クラフトビールブーム、そしてこの 10 年の第二次クラフトビールブームで、市場は行き着くところまで来てしまったと考えています。「今や、クラフトビールの市場は飽和状態あると思う。クラフトビールの市場シェアは日本全体で 1% 未満であり、それは 1% 程度まで達すると考えている。」(同氏)


日本の文化では、おかずなしでビールだけを飲むことはあまり受け入れられません。つまり、日本食を引き立てるビールがいつでも好まれているので、同社の大人気商品であるスーパードライのようなスッキリとしてキレのあるラガーがその地位を保っていられるのだと中村氏は考えます。

 

「各醸造所で作る味と香りはすべて同じものでなければなりません。」「お客様が日本国内のどこへ出かけたとしても、同じ味を楽しめる必要があります」だからと言って、アサヒビールが新しい製品を試していないわけではありません。GlobalData によれば、フレーバービールは 1999 年から 2007 年までの平均年間成長率が 12% と最も成長の早いニッチ市場の 1つですが、同社はここに多額の投資を行っています。
「現在は、ワインのようにお肉に合う飲み物として、チェリー味のビールを販売しています。」と、中村氏は語ります。「以前、チョコレートビールを製造していたこともあります。こちらは特製のチョコレートに合うビールとして展開していました。」

 

さらにアサヒビールは、四季折々に特徴のある季節限定ビールも展開しています。また、期間限定でしたが非常に軽快で透明なクリアクラフトなど、透明な醸造酒にも挑んでいます。クリアクラフトは、麦芽含有量が低いためビールではなく「発泡酒」に分類されていました。発泡酒は課税率が低くなるため、その分の価格を抑えることができます。こうした発泡酒や季節限定ビールなどは、純粋なビールを好むブルックリン・ブルワリー社の方々は眉をひそめてしまうかもしれません。しかし、ブルックリン社もまた、従来のカテゴリーに収まらないビールを作っています。


「過去の伝統的なスタイルのクラフトビールは、既にたくさんの醸造家によってすべて作り尽くされてしまっています。そのため、基本のスタイルを重視する醸造家が減り、実験的な製品が増えています」と、米国のプレミアム製品部門についてウィルソン氏は述べています。同氏が狙っているのは、酸味と濁りの強い IPA のカテゴリーです。野生のブレタノマイセス酵母と、ベルギーのランビックビールで独自の酸味を出すために長年使われてきたラクトバチルス菌を使って製品開発を進めています。


ウィルソン氏は、こうした実験的な手法にはアルファ・ラバルの装置が欠かせないと言います。「当社が購入したのはカスタマイズされた熱交換スキッドシステムですが、開発中であった新作のサワービールの生産量を増やすうえで重要な要因となりました」(同氏)


このシステムは、同社のウィリアムズバーグ醸造所の狭さに合わせて占有面積ができる限り抑えられているものの、同施設の生産量を 30% 増加させました。大まかに言えば、信頼できる設備が手に入ればそれだけビールの試行錯誤に費やせる時間が増えると、同氏は述べています。

 

「私は、『醸造家が良くても設備が安物ならばダメ』という言葉を強く信じているのです」(同氏)
日本では、10 年以上前からアルコールを含まない「ビールテイスト飲料」に対する需要が高まり始めました。「日本政府が被雇用者の健康の向上を命じたためです」そう説明するのは、アルファ・ラバルの醸造システム部門担当副社長であるジョン・カイル・ドートンです。2004 年から 2009 年の間、彼は日本に駐在していました。


「政府は、健康状態が一定の水準に達していない被雇用者の健康保険料が高くなるよう定めました。これがきっかけとなり、多くの被雇用者が健康的な食生活を心掛けるようなりました。数多くのノンアルコール飲料が急激に売上を伸ばし始めたのはこの頃です」ともドートンは語ります。ノンアルコールビールテイスト飲料は、醸造過程でビールからアルコールを取り除くことで製造されるのではなく、ソフトドリンクと同様の方法で製造されます。独特のフレーバーを追加してビールに似たテイストを作り出すのです。2012 年の発売以来、アサヒドライゼロは日本で最も人気のあるノンアルコールビールテイスト飲料です。しかし、日本にはノンアルコールビールの製造を開始した醸造所はまだありません。ドートンの語るところによれば、ノンアルコール飲料の醸造は人が考えているほど簡単ではなく、ぴったりの味を実現するには長年の試行錯誤が必要になります。


「普通のビールを持ってきて、アルコール分を抜いて飲んでみれば、その味にがっかりすることでしょう」と、彼は言います。「普通とは違う、特別なビールが必要になります。それも、こうした製品を主力製品と併せて販売する以上、互角の実力が必要になることに最新の注意を払わなければなりません」

 

アメリカで は、過去 10 年間にわたってクラフトビールが 2 桁の成長率を誇っていましたが、2017 年に消費量の増加がわずか 5% に留まった(アメリカ醸造業協会による)ところを見ると、この成長率もそろそろ横這いになりそうです。

しかし、ブルックリン・ブルワリー社の国際市場に対する依存度が高まっても、開発プロセスが変わることはないとウィルソン氏は語ります。事実、同氏は世界各地の味に関心を寄せてはいるものの、ブルックリン社の新製品では、同社の熟練の醸造家ならではの味、興味、好みが原点のころから常に変わらず保たれています。「当社の開発研究、および現在取り組んでいる企画はすべて、自分たちが飲みたいものについて社内で話し合うことから始まっています。そして、社内の基準を満たすビールが出来上がると、次はそれを他の場所に適用できないか検討しています」と、ウィルソン氏。「それが、一般的なクラフト醸造の大原則であると思います」

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