海運の未来を左右するこの瞬間に、共に地図を描きましょう
本稿では、サミール・カルラがMEPC 83を振り返り、海運業界における新たな温室効果ガス(GHG)規制の影響、そして燃料の柔軟性、エネルギー効率、エネルギー転換、カーボンニュートラルの必要性について考察しています。
更新日 2025-07-22 執筆者 Sameer Kalra, President, Marine Division「この業界で私が学んだ最も大きなことがあるとすれば──それは、進歩は決して穏やかで安定した流れではないということです。時にゆっくりと、時に一気に押し寄せながらも、常に前に進み続けているのです。」– サミール・カルラ
まさに今、私たちはその“急速な変化の波”の真っただ中にいます。グリーンメタノールやグリーンアンモニアといった新しい燃料の登場、デジタルソリューションの進化、複雑化する地政学、規制の変化、そして社会的な期待の高まりが、海事業界の風景を大きく塗り替えようとしています。
最近のMEPC 83会合では、温室効果ガス(GHG)排出に対する罰則の強化、大気汚染物質の抑制を目的とした排出規制海域(ECA)の拡大、燃費削減に向けたエネルギー効率技術への注力強化といった合意がなされました。これらの措置は今後の規制の方向性を示しており、船主の皆様にとって、いま行動を起こすことが「競争力」や「適合性」を保つ鍵となります。
持続可能性とは、遠い未来の話ではありません。まさに今、海運の未来を再構築し直すときです。現状維持という選択肢は、もはや存在しません。
だからこそ、今年のノル・シッピングのテーマ「Future proof(将来への備え)」がこれほどまでに響くのです。これは単なるキャッチフレーズではなく、行動への呼びかけであり、「未来を見据えるとは、すべての答えを知っていることではなく、変化に柔軟であること」だというメッセージなのです。
この包括的な考え方は、アルファ・ラバルのサービス姿勢にも深く根付いています。言い古された言葉かもしれませんが、私たちのDNAそのものです。
明日の理想的なエネルギーキャリア?──答えは一つではありません。
よく受ける質問があります。「未来の主力燃料は何ですか?」──私たちの見解では、中期的にはグリーンメタノール、グリーンアンモニア、LPG、LNG、水素、バイオ燃料といった複数の燃料が併存する「マルチ・フューエル」の時代が訪れると考えています。現在、LNGは他の代替燃料が十分なスケールで利用可能になるまでの“架け橋”として再評価されています。
だからこそ、アルファ・ラバルは単一の燃料に賭けるような選択はしていません。私たちのマリン向け製品群は、あらゆる燃料に対応できる“フューエル・アグノスティック(燃料非依存)”な設計になっており、お客様が「全か無か」の選択を迫られないようにしています。
私たちにとっての“将来性”とは「柔軟性」であり、それは「いま対応できる力」だけでなく、「5年後、10年後、20年後も適応できる力」を意味しています。
持続可能性への第一歩は、効率化から
最も環境に優しい燃料とは、「使わない燃料」である──これは海運の脱炭素化の本質です。燃料を切り替える前に、まずはエネルギー使用を最適化すべきなのです。
船級協会DNVの推計によれば、運航効率の改善だけでも、船舶の排出量を最大16%削減できるとされています。これは理論上の話ではなく、「いま実現可能な現実」です。
エネルギー効率は、アルファ・ラバルの使命の中心であり続けてきましたが、私たちはさらにそのレベルを引き上げています。 排熱回収、高性能セパレーター、リアルタイムで最適化するインテリジェント制御システム、そしてOceanGlideによる空気潤滑技術やNRG Marineの超音波防汚ソリューションなど、革新的な技術を通じて、お客様の排出削減・燃料節約・環境規制対応を支援しています。
未知の領域へ、果敢に踏み出す
アルファ・ラバルの原点は、「流体処理」「分離」「熱交換」といった物理的なシステムにあります。しかし時代とともに、私たちも進化してきました。
StormGeoの買収は、私たちがデジタル分野に本格参入し、強くコミットする転機となりました。StormGeoのソリューションは、航路最適化やパフォーマンス管理、リアルタイムの意思決定を可能にし、環境負荷と運用コストの両方を削減します。
さらに、クラウドベースのシステムや自動化、AIを活用したデジタル化によって、船上のさまざまなシステムをつなぎ、可視化・分析・制御を実現しています。ゼロエミッション船を目指すうえで、デジタル化は欠かせないツールです。
風力補助推進を目的としたOceanbird(Wallenius社とのJV)は、未来に向けた新たな取り組みの一例です。私たちは初めて、航空力学のエンジニアを採用しました。2024年には最初のウィングセイル基礎が船舶に設置され、2025年には完全なウィングセイルの運用が予定されています。
“聞くこと”から始まる共創
私たちの最大のイノベーションは、決して独りで生まれたものではありません。お客様の声に耳を傾け、課題や目標を理解し、ともに考える中で生まれてきたのです。
アルファ・ラバルは、WinGDやMAN Energy Solutionsと連携し、メタノール・アンモニア対応のエンジンに最適化されたシステムの準備を進めています。船主や造船所とも密接に連携し、代替燃料や排出制御に関する実用的かつ拡張可能なソリューションを共同開発しています。
また、デンマーク・オールボーにあるTest & Training Centreでは、実際の外洋船規模で設備・プロセスのテストや検証を行い、パートナーを迎え入れて共創を進めています。 こうした取り組みの加速には、Methanol InstituteやMaersk Mc-Kinney Møller Center for Zero Carbon Shippingといったイニシアチブへの参加も欠かせません。学びを共有し合うことで、前進も加速するのです。
持続可能性は、自社の足元から
アルファ・ラバルは、2027年までに自社の事業活動においてカーボンニュートラルを達成することを宣言しています。スコープ1および2の排出ゼロ、そしてスコープ3排出量の50%削減を目指しています。これは野心的な目標ですが、いまこそ必要な一歩です。
海運の脱炭素化は、まず自社の内側から始まります。完璧ではありませんが、私たちは毎日、実際に前進しています。
これからの航路
「これからどうなるのか?」とよく聞かれます。私の答えはこうです──最終目的地はまだはっきり見えなくても、私たちは確実に正しい方向へ進んでいます。
優れたアイデアは、設計図から生まれるわけではありません。対話、勇気、そして本気の姿勢から生まれるのです。
そしていま、その精神は業界全体に広がり始めています。カーボンニュートラルな物流を求める荷主、革新的な取り組みに挑戦する船主たち── アルファ・ラバルは、そうした未来にただ備えるのではなく、イノベーションと顧客志向の姿勢で、その未来をともに創り上げています。
専門家のインサイト
サミール・カルラによるポッドキャストでは、変化を受け入れる姿勢、パートナーシップの力、透明性と持続可能性の重要性など、未来志向の海運業界に向けた加速のヒントが数多く語られています。
代替燃料ソリューションでエネルギー転換を加速
エネルギー転換のどの段階にいても、どの燃料を選んでも──アルファ・ラバルは常にお客様を支援します。 当社の幅広いポートフォリオは、LNG、LPG、メタノール、バイオ燃料、アンモニアを含む、従来型および代替燃料の両方をカバーしています。 代替燃料の活用から消費削減まで、最先端の技術と長年の経験に基づくアルファ・ラバルのソリューションは、柔軟な燃料対応と将来性を両立。 安全かつ効率的な移行を支え、ネットゼロへの道のりを力強く加速させます。
アルファ・ラバルの持続可能なソリューションの詳細をご覧ください。
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